白内障手術と同時に行う「iStent inject W」とは? ─ 最近の研究から見えてきたこと
緑内障の治療というと、「目薬」のイメージを持たれる方が多いと思います。
実際、多くの患者さんは毎日点眼を続けながら眼圧をコントロールしています。しかし、
・点眼の回数が多い
・入れ忘れてしまう
・目がしみる
・目の表面が荒れる
など、長期間の点眼にはさまざまな負担があります。
最近では、こうした負担を減らす目的で、「MIGS(ミグス)」と呼ばれる低侵襲緑内障手術が広がってきています。
当院では、その中でも iStent inject W(アイステント インジェクト W) を白内障手術と同時に行っています。
iStent inject Wとは?
iStent inject Wは、とても小さなステント(医療用の小さな管)を眼の中に入れ、房水(眼の中の水)の流れを改善することで眼圧を下げる治療です。
従来の緑内障手術と比べると、
・傷が小さい
・回復が比較的早い
・白内障手術と同時にできる
という特徴があります。
特に、「点眼を少しでも減らしたい」
という患者さんにとって、選択肢の一つになっています。
最近発表された興味深い研究
2026年に、スウェーデンからiStent inject Wに関する前向き無作為化比較試験が報告されました。
この研究では、
・白内障手術単独
・白内障+iStent inject W
・白内障+KDB(別のMIGS)
を比較しています。
結果として、「白内障手術にiStentを追加した群では、点眼薬を減らせた患者さんが有意に多かった」ことが示されました。
特に興味深かったのは、「眼圧を劇的に下げた」というより、
“点眼負担を減らせた”ことに価値があった点です。
「点眼を減らせる」という意味
これは実際には、とても大きな意味があります。
緑内障は長い付き合いになる病気です。
毎日何年も点眼を続けることは、思っている以上に負担になります。
また、点眼が増えるほど、
・目の乾燥
・充血
・角膜障害
・アレルギー症状
などが起こりやすくなります。
研究でも、「iStentを併用した患者さんでは、点眼不要になった割合が高かった」ことが報告されています。
術後の眼圧スパイクが少なかった
もう一つ興味深かったのは、術翌日の急激な眼圧上昇(眼圧スパイク)が、iStent群で少なかったことです。
これは特に、
・落屑症候群
・高眼圧
・進行緑内障
の患者さんでは重要なポイントになる可能性があります。
もちろん万能ではありません
一方で、iStentにも限界があります。
高度に進行した緑内障や、非常に低い眼圧が必要な場合には、従来の濾過手術が必要になることもあります。
また、「iStentを入れれば緑内障が治る」わけではありません。
あくまで、
・眼圧を安定させる
・点眼負担を減らす
・将来的な管理を楽にする
ことを目指す治療です。
当院で大切にしていること
当院では、単に「新しい手術だから勧める」ということはしていません。
患者さんごとに、
・緑内障の進行度
・目標眼圧
・点眼負担
・年齢
・ライフスタイル
などを考えながら、
「本当にその方に合っているか」を大切にしています。
iStent inject Wは、特に
・白内障手術予定
・点眼を減らしたい
・比較的早期〜中等度緑内障
の患者さんでは、有力な選択肢の一つになると感じています。
最後に
緑内障治療は、単に「眼圧を下げる」だけではなく、
“長く無理なく続けられること”も非常に大切です。
最近のMIGSの進歩によって、
「見え方を守りながら、生活の負担も減らす」
という考え方が少しずつ現実になってきています。
今後も、新しい知見を取り入れながら、患者さん一人ひとりに合った治療を考えていきたいと思っています。