赤色光が近視進行を抑制
1日2回、3分ずつ赤色光を見つめることを継続すると、近視進行を抑える効果を確認したという研究結果が、
米国眼科学会の機関誌Ophthalmologyの電子版に掲載されましたので紹介します。
この研究は中国の広州にある大学を中心に、多施設で行われました。
軽度〜中等度の近視を有する8歳〜13歳の264例を、
1日2回、3分ずつ赤色光を見つめることを1週間に5日行なうグループと
近視矯正の眼鏡装用のみのグループに分け、
近視の進行状況について1年間、経過を観察しました。
赤色光の波長は650nm、照度は1600ルクスです。
1600ルクスはとても明るい光で、極めて精密な手作業をするのに必要な明るさです。
(中国では弱視治療に赤色光を見つめる治療が行われており、弱視治療用の卓上市販器を、今回の研究では利用しています。)
目の長さが延びると近視が進むのですが、
1年後、近視矯正の眼鏡装用のみのグループでは、目の長さが平均で0.38mm延び、
赤色光を見つめる治療を行ったグループでは、0.13mmの伸びに止まっていました。
さらに赤色光を見つめる治療を行ったグループの31.6%は、目の長さの伸びが0.05mm以内で、目の長さの伸び、すなわち近視が進行しませんでした。
今回の研究は1年間の経過ですので、長期の治療効果や強い光を見つめることの安全性に対する評価が必要です。
また、治療を中断することでのリバウンドの有無や、赤色光を見つめる際のより有効な条件の検証が必要であると論文では述べています。
屋外で過ごしたり、太陽光を浴びることが、近視発症や進行の抑制に効果があることが知られており、今回の研究はそれらの知見に基づき、太陽光に含まれる650nmの赤色光を既存の装置を用いて、効率的に眼内に照射するという試みです。
スマホやパソコンの頻用などの影響で、世界的に近視人口が増加しています。
強度近視は壮年期に眼疾患の発症リスクを高めますので、近年、国家規模で近視予防への取り組みが行われ始めています。日本ではまだ利用できない赤色光の装置ですが、今後さらに近視予防に関する研究成果の蓄積が期待されます。
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