3歳児健診
2024.10.9 ブログ
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4月15日の科学雑誌「Nature」電子版に、網膜疾患の治療に関連する非常に興味深い論文が掲載されました。
目の中の網膜で光を感じる作用を持つ視細胞を皮膚細胞から作成し、
網膜変性によって視機能を喪失したマウスの網膜下に作成した視細胞を移植することで、網膜変性マウスが光を感知できるようになったという報告です。
この研究の凄い点は、5種類の化学物質を混ぜた液体に皮膚細胞を浸すだけで、
わずか10日間で皮膚細胞から視細胞を作成したことです。
「皮膚細胞から作った網膜細胞を目に移植」で思い出すのは、
現在、加齢黄斑変性に対する臨床治験が進行中の、
皮膚細胞からiPS細胞を作り、さらにiPS細胞を網膜細胞に分化させ、
この網膜細胞を網膜下に移植する治療です。
iPS細胞からは、身体の中の様々な種類の細胞を作ることができますが、
作成には6か月ほどの時間を要します。
今回の研究ではiPS細胞を介さず、皮膚細胞からダイレクトに視細胞を作ることに成功したことで、大幅な時間短縮につながりました。
網膜変性マウスが光を感知できるようになったことは、以下のような所見から証明されました。
光を感知すると瞳が収縮するのですが、細胞の移植を受けて3〜4週には、移植を受けた14匹の網膜変性マウスのうち6匹で、薄明かりの刺激で瞳の収縮が認められるようになりました。
さらにマウスは暗い場所を好む性質があるのですが,瞳の収縮反応が認められるようになった網膜変性マウスは、視機能を喪失したマウスよりも暗い場所に移動し滞在する時間が長く、行動的にも視機能の改善が確認されました。
また今回の研究では、皮膚細胞からダイレクトに視細胞を作成することができるメカニズムについても解明しています。
iPS細胞を介さずダイレクトに視細胞を作り出したことは、再生医療の発展に大きく寄与すると推測されます。
この視細胞移植は、上述の加齢黄斑変性やその他の網膜疾患で視細胞障害のために視機能が低下した症例に対する、新しく迅速な治療法となる可能性があります。
今後は視細胞以外の種類の細胞を作成する方法が開発されることが期待されます。
今回はマウスでの研究ですが、さらに研究が進み、ヒトへの応用が可能になればと思います。