眼窩底骨折
- 2020.2.14
- ブログ
バドミントンの桃田賢斗選手が右眼の眼窩(がんか)底骨折に対する手術を受け、2月13日に退院したことが報じられました。
手術前は、物が二つに見える複視を自覚し、バドミントンのシャトルがダブって見えたそうです。
そこで今回は、眼科底骨折について解説したいと思います。
唐突ですが、骸骨(がいこつ)を思い浮かべて下さい。
本来、眼球があるべき部分は骨で覆われ凹んでおり、眼窩と呼ばれています。
眼窩の入り口(顔の表面側)の骨は頑丈ですが、凹みの奥を構成する骨、特に鼻側~下壁は薄い骨で出来ています。
眼球と眼窩の骨とのスペースには、脂肪や軟らかい組織が詰まっていて、眼球を保護しています。また眼球には6本の筋肉が付いて、眼球から眼窩の奥の方へと走行しています。
眼球に正面からボールや拳(こぶし)などが当たり、強い外力が加わると、眼球は瞬間的に変形し、その歪みや圧力で眼窩組織が圧排され、眼窩骨が薄くて弱い部分、すなわち眼窩下壁である眼窩底に吹き抜け状の骨折が起こりやすいのです。
骨折部からは眼窩内の脂肪組織や眼を動かす筋肉などがはみ出し、骨折の隙間に挟まってしまいます。
特に眼球の下方に付着している下直筋と下斜筋が障害される頻度が高まります。
下直筋は外側下方、下斜筋は内側上方に眼球を動かす際に最も作動する筋肉 ですので、眼球運動が制限される方向や程度は複雑です。
左右の眼球がバランス良く動くことで、どの方向に視線を動かしても常に物は一つに見えるのです。
片眼の動きが制限されると、眼球の動きがアンバランスとなり物が二つに見える複視が生じます。
手術方法は確立された手技ですので、滞りなく終了したものと思います。
桃田選手の無理の無い復帰を望みながらも、1日も早い試合復帰を期待してしまう複雑な心境なのが、多くの日本国民の心情かと思います。
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理事長・院長