網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫は、治療を先延ばしにしないことが大切です
突然、片目がかすむ、見たいところがぼやける、線がゆがんで見える。
このような症状の原因の一つに「網膜静脈閉塞症」があります。
網膜静脈閉塞症は、目の奥にある網膜の静脈が詰まり、血液や水分が血管の外へ漏れ出す病気です。
ものを見る中心部分である「黄斑」に水分がたまると、黄斑浮腫というむくみが生じ、視力が低下します。
今回紹介する研究では、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対して、抗VEGF薬のアフリベルセプトを使用した三つの大規模臨床試験のデータが改めて解析されました。
ここで大切なのは、この研究が調べた期間は、単に「網膜静脈閉塞症と診断されてから」ではなく、「網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫と診断されてから、最初の注射治療を受けるまで」だったという点です。
研究では、黄斑浮腫と診断されてから1か月以内に治療を始めた患者さんと、それより後に治療を始めた患者さんの経過が比較されました。
その結果、網膜中心静脈閉塞症でも網膜分枝静脈閉塞症でも、早く治療を始めた患者さんの方が、治療後の視力改善が大きい傾向にありました。
網膜中心静脈閉塞症を対象とした試験の一つでは、治療開始から24週後の視力改善は、診断後1か月以内に治療を始めた患者さんで平均19.8文字(視力表で約4段階の改善)、3か月を超えてから始めた患者さんでは平均11.9文字(視力表で約2段階の改善)でした。
興味深いのは、治療を始める時期が遅くても、OCT検査で見た網膜のむくみ(黄斑浮腫)はしっかり改善していたことです。
つまり、見た目にはむくみが引いても、視力は同じようには戻らないことがあるのです。
黄斑は、カメラでいえば最も大切な中心部分です。
むくみが長く続くと、網膜の神経や光を感じる細胞が傷つき、あとから水分を取り除いても、機能が十分に回復しない可能性があります。
研究でも、黄斑浮腫が長く続くことが、元に戻りにくい網膜障害につながる可能性が示されています。
また、治療前の視力が悪かった患者さんほど、治療後の「改善幅」は大きくなりましたが、最終的な視力は、治療前から比較的よく見えていた患者さんの方が良好でした。
「悪くなってから治療した方が、たくさん改善する」という意味ではありません。
視力が大きく下がってから治療すると、ある程度は回復しても、もとの良好な視力まで戻らないことがある、ということです。
今回の研究から読み取れるのは、黄斑浮腫があり、視力に影響が出ている場合には、早急に治療を開始することが大切ということです。
急に見えにくくなった、片目がかすむ、ものがゆがむといった症状がある場合には、早めに眼科を受診し、黄斑浮腫の有無を確認することが、視力を守る第一歩です。
カテゴリー
- お知らせ (12)
- ブログ (477)
- iPS細胞 (19)
- IT眼症 (9)
- OCTアンギオ (9)
- アルツハイマー病 (8)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (36)
- サプリメント (16)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (17)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (16)
- 加齢黄斑変性 (117)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (2)
- 白内障 (28)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (12)
- 糖尿病網膜症 (56)
- 紫外線 (3)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (4)
- 網膜剥離 (17)
- 網膜動脈閉塞 (8)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (15)
- 緑内障 (38)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (31)
- 近況報告 (90)
- 近視予防 (43)
- 飛蚊症・光視症 (16)
- 黄斑円孔 (5)
- 黄斑前膜 (3)
- 未分類 (12)
アーカイブ
最新の記事
- 2026.9.13
- 網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫は、治療を先延ばしにしないことが大切です
- 2026.9.5
- 年齢を重ねると「目のゴミ処理能力」が落ちる? ~最新研究が明らかにした加齢黄斑変性との関係~
- 2026.9.3
- 令和8年10月8日(木)〜10月13日(火) 休診いたします
- 2026.9.3
- 令和8年9月30日(水)診療について
- 2026.8.30
- 甲状腺眼症の治療が変わる?―眼球突出を改善する新しい治療薬
- 2026.8.23
- 管楽器を吹くと眼圧が上がる?
- 2026.8.9
- 「先生、目に良い食べ物はありますか?」~最新研究から分かった、加齢黄斑変性と食事の関係~
- 2026.8.3
- 「目」と「体」、そして笑顔が健康寿命を支える~北見市民公開講座で感じた大切なこと~
- 2026.7.23
- HTBでもお話しした「白内障」~これからの日本でますます大切になる目の健康~
- 2026.7.19
- AIが眼科医を助ける時代が、すぐそこまで来ています



理事長・院長