年齢を重ねると「目のゴミ処理能力」が落ちる? ~最新研究が明らかにした加齢黄斑変性との関係~
「年齢とともに目が見えにくくなるのは仕方がない。」
そう思っている方は少なくありません。
実は私たちの目の中では、毎日たくさんの「ゴミ」が発生しています。そして、そのゴミを掃除してくれる細胞があります。
最近、岐阜薬科大学などの研究グループは、この「掃除機能」が加齢によって低下する仕組みを解明したと発表しました。
目にも毎日ゴミが出る
私たちが物を見るために働いている網膜の視細胞は、毎日少しずつ古い部分を作り替えています。
古くなった部分は不要になりますが、そのまま残ってしまうと視力に悪影響を及ぼします。
そこで活躍するのが「網膜色素上皮(RPE)」という細胞です。
この細胞は毎日、不要になった視細胞のかけらを取り込み、分解し、きれいに掃除・分解してくれています。
いわば、目の中の清掃スタッフです。
年齢とともに掃除能力が低下する
以前から、年齢を重ねるとこの掃除能力が低下することは知られていました。
しかし、「なぜ低下するのか」は長年よく分かっていませんでした。
今回の研究では、その原因として「小胞体ストレス」が関係していることが明らかになりました。
小胞体ストレスとは?
難しい言葉ですが、細胞の中には「小胞体」という工場があります。
ここでは細胞が必要とするたんぱく質を作っています。
ところが加齢やさまざまなストレスによって、この工場に不良品がたまると「小胞体ストレス」が起こります。
今回の研究では、加齢したマウスの目では、このストレスが特に網膜色素上皮で強くなっていることが確認されました。
掃除機能が止まる仕組み
研究チームはさらに詳しく調べました。
すると、小胞体ストレスが起こると、RPE細胞の表面にある「MERTK」という重要な受容体が切断されてしまうことが分かりました。
この受容体は、ゴミを見つけて取り込むために欠かせないセンサーです。
さらに、取り込んだゴミを分解する「リソソーム」という細胞内の処理工場の働きも低下していました。
つまり、
・ゴミを見つける力が落ちる
・ゴミを取り込めない
・取り込んでも分解できない
という三重の障害が起きていたのです。
将来の新しい治療につながる可能性
さらに興味深いことに、小胞体ストレスを抑える薬剤を使うと、この掃除機能が改善しました。
もちろん、これはまだ細胞実験や動物実験の段階です。
すぐに新しい治療薬が使えるわけではありません。
しかし、「目のゴミ処理能力を回復させる」という全く新しい治療の方向性を示した研究として、大変注目されます。
目の健康を守るために
加齢黄斑変性は、日本でも高齢化とともに増えている病気です。
現在は抗VEGF薬や補体活性抑制剤による治療が大きく進歩し、多くの患者さんで視力を守れるようになりました。
一方で、今回の研究は「なぜ病気が起こるのか」という根本的な仕組みに迫ったものです。
今後、このような基礎研究が進めば、「発症を遅らせる」「細胞の掃除能力を維持する」といった新しい治療法につながる可能性があります。
年齢を重ねても快適な視力を保つためには、早期発見・早期治療が何より重要です。
「最近、文字がゆがむ」「見えにくくなった」「片目だけ見え方が違う」と感じたら、年齢のせいと決めつけず、ぜひ眼科で検査を受けてください。
私たちひきち眼科でも、最新の知見を取り入れながら、患者さんの大切な視力を守る診療を続けてまいります。
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理事長・院長