「先生、目に良い食べ物はありますか?」~最新研究から分かった、加齢黄斑変性と食事の関係~
診察室で患者さんから最もよく受ける質問の一つがあります。
「先生、目に良い食べ物ってありますか?」
以前は、「バランスよく食べましょう」という漠然としたお話しかできませんでした。
しかし近年、多くの研究が行われ、「どのような食事が加齢黄斑変性の進行を抑える可能性があるのか」が少しずつ分かってきました。
先日発表されたアメリカの総説では、現在得られている科学的な根拠を整理し、患者さんへの具体的な食事のアドバイスがまとめられています。
キーワードは「地中海食」
論文で最も強く勧められているのが地中海食です。
「地中海料理を毎日食べましょう」という意味ではありません。
大切なのは食事の考え方です。
具体的には、
・野菜をたっぷり食べる
・果物を毎日取り入れる
・魚を週に数回食べる
・豆類やナッツを取り入れる
・オリーブオイルなど植物性の油を使う
・赤身の肉や加工肉を食べ過ぎない
という食生活です。
実は、日本の伝統的な和食にも共通する点が多くあります。
特におすすめなのは「魚」
この論文では、さまざまな食品の中で最も効果が期待できる食品は魚であると報告されています。
魚をよく食べる人ほど、加齢黄斑変性が進行する危険性が低かったのです。
次に重要なのが、
・野菜をしっかり食べること
・赤身肉を控えめにすること
でした。
サプリメントだけでは十分ではありません
「AREDS2のサプリメントを飲んでいるから安心ですか?」
という質問もよくいただきます。
AREDS2は、中等度以上の加齢黄斑変性では進行を抑える効果が期待できるサプリメントですが、論文では食事とサプリメントは代わりになるものではなく、お互いを補い合う関係であることが強調されています。
つまり、「サプリを飲んでいるから好きな物を食べていい」というわけではありません。
逆に、「食事に気を付けているからサプリはいらない」ということでもありません。
両方を続けることで、より大きな効果が期待できると考えられています。
食事を変えるのに遅すぎることはありません
論文の中で印象的だったのは、
「食事を改善するのに早すぎることも、遅すぎることもない」という考え方です。
早期の加齢黄斑変性では病気の進行を遅らせる可能性があり、中等度では進行した病気への移行を減らし、さらに進行した萎縮型加齢黄斑変性でも、病気の広がる速度を遅らせる可能性が示されています。
目だけでなく、体にも良い食事
今回紹介された食事は、目だけのための特別な食事ではありません。
野菜や果物、魚を中心とした食生活は、
・心臓病
・脳卒中
・認知症
などの予防にも役立つことが知られています。
つまり、「目に良い食事」は、「体にも良い食事」なのです。
最後に
診察では注射や手術のお話をすることが多いのですが、毎日の食事は患者さんご自身が取り組める大切な治療の一つです。
「何を食べるか」は、今日からでも変えることができます。
・魚を一品増やしてみる。
・野菜をもう一皿食べてみる。
・赤身肉を少し控えてみる。
そんな小さな積み重ねが、将来の「見える力」を守ることにつながるかもしれません。
これからも最新の医学的根拠に基づき、治療だけでなく生活習慣についても、患者さんと一緒に考えていきたいと思います。
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理事長・院長