加齢黄斑変性の治療、導入期治療後の状態がその後の2年間の治療経過と関係することが明らかに
このたび、ひきち眼科で行った加齢黄斑変性に関する研究が、国際眼科医学誌 Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology に採択されました。
今回の研究では、治療開始後の早い段階で黄斑部の滲出(しみ出した水分)がなくなった眼では、その後2年間の注射回数が少なく、治療間隔を長くできる傾向があることが明らかになりました。
加齢黄斑変性の治療では、なぜ注射を繰り返すのでしょうか?
加齢黄斑変性は、ものを見るために重要な網膜の中心部分「黄斑」に障害が起こる病気です。
そのうち、異常な血管が発生して出血や水分の漏れを引き起こすタイプを「新生血管型加齢黄斑変性」といいます。ものがゆがんで見えたり、視野の中心が見えにくくなったりする原因となります。
現在、新生血管型加齢黄斑変性の中心的な治療は、眼の中に薬剤を注射する「抗VEGF療法」です。
この治療により、異常な血管の活動を抑え、黄斑部の水分を減らすことができます。

しかし、いったん改善しても再び水分がたまることがあるため、多くの患者さんでは定期的な診察と注射を続ける必要があります。
注射や通院の負担をできるだけ減らしながら、視力を守ることが重要です。
最初の4回の注射後の状態に注目しました
今回の研究では、ファリシマブ(商品名:バビースモ)という薬剤で治療を開始した、新生血管型加齢黄斑変性の患者さん91人91眼を対象に、2年間の治療経過を調べました。
治療開始時にはまずひと月に1回毎4回の注射を行い(導入期)、その後は病気の活動性を確認しながら、注射間隔を調整しました。
特に注目したのは、最初の4回の注射後に、黄斑部の水分が完全になくなっているかどうかです。
網膜の断面を詳しく調べるOCT(光干渉断層計)という検査を用いて評価しました。
黄斑部の水分がなくなった状態を、医学的には「ドライ化」と呼びます。
91眼のうち、73眼ではドライ化が認められ、18眼では水分が残っていました。
早期に水分が消失した眼では、治療間隔を長くできる傾向
2年間の経過を調べたところ、12週間以上の注射間隔に到達した割合は、次のようになりました。
・最初の4回の注射後にドライ化した眼:93.2%(73眼中68眼)
・水分が残っていた眼:66.7%(18眼中12眼)
また、2年間で到達した最長の注射間隔は、ドライ化した眼で平均15.0週間、水分が残っていた眼で平均11.1週間でした。
さらに、2年間の注射回数も、早期にドライ化した眼の方が平均約2.3回少ないという結果でした。
これらの結果から、治療開始後の早い段階での反応が、その後の治療負担と関連していることが示されました。
最初の4回で水分が残っていても、治療が効かないわけではありません
ここで大切なのは、最初の4回の注射で水分が完全に消失しなかった場合でも、治療効果がないということではない点です。
今回の研究でも、水分が残っていた眼の約3分の2は、その後12週間以上の注射間隔に到達しています。
加齢黄斑変性は、病気のタイプや黄斑部の状態によって、治療への反応が異なります。
また、今回の研究は、実際の診療経過を振り返って分析したものであり、初期の反応だけで将来の経過を確実に予測できるという意味ではありません。
治療中のOCT所見を丁寧に確認し、それぞれの患者さんに適した注射間隔を考えることが重要です。
今後も、視力を守りながら治療負担を減らすために
加齢黄斑変性の治療では、視機能の改善・維持することが第一の目標です。同時に、通院回数や注射の負担をできるだけ軽くすることも大切です。
今回の研究は、治療開始後の黄斑部の状態を評価することが、その後の治療方針を考えるうえで役立つ可能性を示しています。
ひきち眼科では、今後も日々の診療から得られる知見を研究につなげ、より良い加齢黄斑変性の治療を目指してまいります。
掲載論文
Early macular dryness after four loading injections of faricimab was associated with reduced two-year treatment burden in treatment-naïve neovascular age-related macular degeneration.
掲載誌:Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology
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理事長・院長