4,000km離れた場所から網膜手術! 遠隔操作ロボットによる新しい眼科医療
2026.10.25 ブログ
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近年、医療の世界ではロボット技術が急速に進歩しています。
外科手術では手術支援ロボットが利用されるようになっていますが、眼科でも新しい試みが始まっています。
眼科手術は、非常に小さく繊細な組織を扱うため、医師には高度な技術と精密な操作が求められます。
今回の研究は、こうした眼科手術を遠隔地から行う可能性を示したものです。
どのような病気に対する手術だったのでしょうか?
対象となったのは、黄斑下出血を生じた42歳の男性です。
黄斑は網膜の中心に位置し、物を細かく見たり、文字を読んだりするために重要な部分です。
加齢黄斑変性やポリープ状脈絡膜血管症(PCV)などでは、黄斑の下に出血が起こることがあります。血液が長期間たまると視細胞が障害され、視力の回復が難しくなる場合があります。
このため、出血の状態によっては、早期の治療が必要となります。
今回の患者さんでは、黄斑の下に比較的大きな出血が認められ、網膜の下に血栓を溶かす薬剤(rt-PA)を注入する治療が行われました。
4,000km離れた場所から、どのように手術したのでしょうか?
患者さんがいたのは中国西部のウルムチ。一方、ロボットを操作する眼科医は、約4,000km離れた中国南部の広州にいました。
まず、ウルムチの手術室にいる医師が通常の硝子体手術を行いました。
その後、広州にいる眼科医が、立体映像を見ながらロボットを遠隔操作し、極めて細い針を網膜の下へ進めて薬剤を注入しました。
通信には5Gネットワークが使用され、通信の遅れは平均約78ミリ秒でした。
手術全体は46分間、そのうち遠隔操作による網膜下注入は約7分間で完了しました。
手術中に大きなトラブルは発生せず、遠隔操作による薬剤注入を予定どおり終了することができました。
ただし、手術のすべてが遠隔操作で行われたわけではなく、現地の医師と遠隔地の医師が役割を分担して実施したものです。
手術後の経過は?
手術後、黄斑下の出血は徐々に減少し、術後23日にはOCTで出血の消失が確認されました。
3か月間の経過観察で重篤な合併症は認められませんでした。
一方、視力は手術前の0.6 logMAR(小数視力で約0.25)から変わらず、明らかな視力改善は得られませんでした。
つまり、出血を取り除くという解剖学的な改善は得られたものの、視力の改善にはつながらなかったという結果でした。
黄斑下出血では、治療によって出血が消失しても、すでに視細胞が障害されている場合には視力が十分に回復しないことがあります。
遠隔ロボット手術が眼科医療を変える?
今回の研究で注目すべき点は、ロボットが人間の眼科医に代わったことではありません。
高度な技術を持つ眼科医が、遠く離れた場所にいる患者さんに対して、精密な手術操作を行えたことに大きな意味があります。
将来的には、専門的な眼科手術を受けられる医療機関が限られた地域でも、遠隔地の専門医による治療が可能になるかもしれません。
北海道のように地域間の移動距離が長い場所でも、こうした技術が発展すれば、新たな医療の選択肢につながる可能性があります。
もちろん、今回の報告はわずか1例であり、安全性や通常の手術と比較した有効性が確立されたわけではありません。通信障害への対応、現地の医療スタッフの確保、機器の導入費用など、解決すべき課題も数多くあります。
それでも、4,000kmという距離を越えて精密な網膜手術が行われたことは、これからの眼科医療の可能性を示す興味深い一歩だと思います。