AAO 2026 米国眼科学会に参加してきました ~AIが変える眼科医療と2本のリボン~
10月8~11日、米国ルイジアナ州ニューオリンズで開催された米国眼科学会(American Academy of Ophthalmology:AAO)の年次総会に参加してきました。

AAOは世界最大級の眼科学会で、世界各国から多くの眼科医や研究者が集まり、最新の研究成果や治療技術について活発な議論が行われます。
今回は久しぶりのアメリカでの学会参加となりました。新しい知識を吸収することはもちろん、海外の眼科医療がどのような方向に進もうとしているのかを肌で感じることも楽しみの一つです。

AIが眼科診療を変える時代へ
今回、私が主に聴講したのは、専門としている網膜・眼底疾患に関するセッションです。
特に印象に残ったテーマの一つが、人工知能(AI)の眼科医療への応用でした。
眼科では眼底写真やOCT(光干渉断層計)など、画像を用いた検査が日常的に行われています。AIはこうした画像の解析を得意としており、すでに病気の発見や診断を補助する研究が進んでいます。
しかし、今回の学会で感じたのは、AIの役割が単なる画像診断から、さらに一歩進もうとしていることです。
例えば、治療前のOCT画像から、その患者さんが今後どの程度治療を必要とするのか、あるいはどの治療法が適しているのかを予測しようとする研究です。
同じ病気であっても、治療によく反応する患者さんもいれば、何度も再発する患者さんもいます。将来、AIがこうした違いを予測できるようになれば、一人ひとりに合わせた、より効率的な治療が可能になるかもしれません。
さらに最近では、AIを使って病気に関わる分子を探索し、新しい治療薬の候補を設計する研究も進んでいます。
萎縮型加齢黄斑変性を対象に、AIを活用して設計された薬剤候補が動物実験で有望な結果を示したという報告もありました。
まだ人に対する有効性が証明されたわけではありませんが、AIが診断だけでなく、新薬の研究開発にも活用され始めていることは大変興味深いことです。
もちろん、AIが医師に代わって診療を行うということではありません。AIによる解析を医師の経験や判断と組み合わせることで、医療の質をさらに高めていくことが期待されています。
萎縮型加齢黄斑変性の治療にも新しい動き
もう一つ注目したのが、萎縮型加齢黄斑変性、特に「地図状萎縮(Geographic Atrophy:GA)」に関する研究です。
加齢黄斑変性には大きく分けて滲出型と萎縮型があります。
滲出型では異常な血管から血液や水分が漏れ出し、視力が低下します。現在は抗VEGF薬の眼内注射によって、多くの患者さんで病状をコントロールできるようになっています。
一方、萎縮型では網膜の細胞が徐々に失われ、時間をかけて視機能が低下していきます。これまで有効な治療法が限られていたことから、世界中で研究が進められてきました。
米国では、地図状萎縮の進行を遅らせることを目的とした新しい薬剤がすでに承認されています。
ただし、失われた視力を回復させる治療ではなく、効果や安全性、どのような患者さんに使用するべきかなど、まだ検討すべき課題があります。
今後は、病気の進行をより正確に予測するAI技術と、新しい治療薬の開発が組み合わさることで、萎縮型加齢黄斑変性の治療も大きく変わっていくかもしれません。
ネームカードには思いがけず2本のリボン
さて、今回の学会では、学術的な話題とは別に、ちょっと嬉しい出来事がありました。
受付で受け取ったネームカードに、茶色と黄緑色の2本のリボンが付いていたのです。
茶色のリボンには「Achievement Award」と書かれていました。

これはAAOへの学術活動などの貢献を評価する賞で、私は2020年にいただきました。
ただ、受賞後にAAOの年次総会へ参加するのは今回が初めてでしたので、実際にこのリボンを付けるのも初めての経験でした。
もう一つの黄緑色のリボンには「Lifetime Engaged Ophthalmologist」と書かれています。
こちらは長年にわたって眼科医として活動し、学術活動を続けている会員を示すものです。
2本のリボンを胸元にぶら下げて会場を歩いていると、すれ違う方がネームカードに目をやり、続いて私の顔を確認するような反応をされることが何度かありました。
「いったい誰だろう?」と思われたのでしょうか。
もちろん、私の思い過ごしかもしれませんが(笑)。
少し照れくさくもありましたが、これまで続けてきた眼科診療や研究活動を振り返る、よい機会になりました。
ニューオリンズの街も楽しみました
学会の合間には、ニューオリンズの街も散策しました。
ニューオリンズはジャズ発祥の地として知られ、フランスやスペインなどの文化が融合した独特の雰囲気を持つ街です。
ミシシッピ川沿いを歩くと、広い川面を大きな貨物船がゆっくりと行き交っています。その雄大な風景を眺めているだけでも、アメリカに来たことを実感します。

また、ニューオリンズといえば音楽と食事。地元のクレオール料理やシーフードも楽しむことができました。
学会では朝から多くの発表を聴講しますが、夜にはその土地の文化や料理を味わう。こうした時間も、海外学会に参加する楽しみの一つです。
もちろん、勉強が第一ですが(笑)。
これからの眼科診療に生かしていきたい
眼科医療は今、大きく変わろうとしています。
新しい薬剤や診断機器の開発に加えて、AIによる画像解析や治療予測、さらには創薬への応用など、以前には考えられなかった技術が次々と登場しています。
今回のAAOでは、こうした変化の最前線に触れることができました。
長く眼科診療に携わっていても、まだまだ新しく学ぶことがあり、それがこの仕事の面白さでもあります。
今回得た知識や刺激を、これからの日々の診療や研究活動に生かしていきたいと思います。
そして、次にAAOへ参加するときには、ネームカードのリボンがもう一本増えているでしょうか。
それはさておき、これからも新しい知識を学び続け、よりよい眼科医療を提供できるよう努めてまいります。
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