他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞移植
- 先日の朝刊にiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞された山中伸弥先生へのインタビューが掲載されていました。
- iPS細胞の研究発表から10年を迎えるのを機に企画されました。
- 記事の中心は先月公表された「他人の細胞から作ったiPS細胞を使い、加齢黄斑変性の患者に移植する手術計画」についてです。
- 2014年、世界で初めてiPS細胞をヒトに応用した症例では、患者の皮膚から作成したiPS細胞を使い、網膜色素上皮細胞シートが移植されました。
- 一人の患者のシートを準備するのに10カ月間、約1億円かかったそうです。これでは一般的な医療として普及しません。この弱点を補うために、健康な人からiPS細胞を作り、保管しておく。
- 必要な時にこの「iPS細胞ストック」を使うという構想です。
- 他人のiPS細胞を移植に使う上での課題は「拒絶反応」です。患者にとって移植された細胞は自らの細胞とは異なるため、体内から排除しようとして、拒絶反応が起こります。
- 先月公表された「他人のiPS細胞を使用する治療計画」では、拒絶反応を無くす・少なくする工夫がなされています。
- 実は先月末、富士フイルムの米再生医療子会社が、米国国立眼科研究所と他人のiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を用いた萎縮型加齢黄斑変性治療に関する共同研究開発契約を締結したことを発表しました。
- 拒絶反応を起こしにくいタイプの他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を移植する計画になっています。(まさに山中先生のプロジェクトと同様のコンセプトです。)
- 自家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞についても共同開発中で、来年1月から米国で萎縮型加齢黄斑変性に対する臨床試験を開始する計画だそうです。
- 世界中で競争すると進歩は加速されます。iPS細胞を用いた医療が臨床の場で広く応用される日が近い将来訪れそうです。
- 現在は完治しない疾患に対しては、世界中で競い合いながら治療法が開発されています。
- 既に病気でお困りの患者さんは、今できる治療をしっかり継続し、来るべき将来に備え、新たな治療法の効果が発揮されやすい状態を保つことも大切かと思います。
カテゴリー
- お知らせ (34)
- ブログ (357)
- iPS細胞 (17)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (5)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (11)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (14)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (12)
- 加齢黄斑変性 (84)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (17)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (35)
- 紫外線 (1)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (13)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (10)
- 緑内障 (24)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (24)
- 近況報告 (74)
- 近視予防 (28)
- 飛蚊症・光視症 (13)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2024.3.23
- ミノサイクリンは萎縮型加齢黄斑変性の治療薬になり得るか?
- 2024.3.15
- 白内障に関する患者様からのご質問
- 2024.3.8
- 眼科健診はどのタイミングで受けると良いのでしょうか?
- 2024.3.2
- 萎縮型加齢黄斑変性の治療薬剤:SyfovreとIzervay
- 2024.2.18
- 若年者の裂孔原性網膜剥離
- 2024.2.11
- 自宅照度が高齢眼科患者の自宅活動量を規定
- 2024.2.3
- 適度な運動は眼疾患を予防する
- 2024.1.27
- 網膜静脈閉塞症は脳卒中/心筋梗塞/死亡リスクが高い
- 2024.1.20
- 滲出型加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫に朗報
- 2024.1.14
- 強度近視では成人後も近視が進行しやすい